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日曜の夜ぐらいは・・・ 第10話 感想

宝くじを当てたことでドロドロした話になると思わせておいて全くならないという新手の詐欺のようなシナリオが見事だった。(褒めてる)

両親の改心の理由もぼんやりしていたけれどそれくらいがちょうどいいと思ったし、翔子と母親の件も想像とはいえ見せてもらえたので満足感は高かった。

 

暗黙の了解的な禁じ手をいくつも使ったドラマだった。だけどなんとなくありどころか今やらないで誰がやるくらい革新的で面白かった。

日曜の夜ぐらいは…最終回

ちょっと大げさでドラマじみたセリフの数々も、そして「日曜の夜ぐらいは…」というタイトルも、本気で週の始まりの癒しとして作っていることが伝わってきた。最終回は店をオープンさせるというクライマックスを冒頭にもってきて、その後のエピソードとさらには主人公のさらにその後の妄想で締めくくる。ドラマ全体でも最初の2話で3人の苦しい環境を描き、3話以降は宝くじの当選金の使い道の話に変わる。まさに現代を戦う視聴者の一時の疑似体験。

 

主人公サチの不幸に対峙するための緊張感、翔子のもがいた人生へのあきらめ、そして若葉が抱え込む恐怖心。大なり小なり近い感情を持っている視聴者はたくさんいただろう。中でも理屈では分かっているのに母親や友達を責めてしまうサチの気持ちは最も刺さるところではなかっただろうか。不幸とのギャップのしんどさのため楽しいことを避けてきた彼女の変革のお話。

サンデイズ

シナリオや演出以外でも見事なところはたくさんあった。まず書いておきたいのは女優生見愛瑠の演技力。年齢と役者としての経験値を考えたら神がかった表現力だったと思う。清野菜名も岸井ゆきのもちょっとクセのある演技派の女優なのに浮かない。少しクサい感じの演じ方が他の二人にもシナリオにもバッチリ合っていた。他の出演作を見たことがないので分からないけど調節していたとしたらバケモノだと思う。

 

めるるの個人力にも関係するけど主要キャストの少なさにも驚く。最近出演者の豪華さや人数で圧倒してくるドラマも多い中で必要最小限体制。どちらが良い悪いということではない。この人数で十分な満足感を得られるドラマに仕上げたことが凄い。移動シーンも多かったため部屋と店だけという閉塞感やセット感も全くなかった。最終回まで変わった配置の居酒屋が出てきて飽きさせなかった。

 

さらには音楽。劇中のBGMも良かったけど最大はやはりMrs. GREEN APPLEのエンディング。毎回少しづつ違う演出も細かくて素晴らしかった。サービス出演は邪魔にならない上品さで好感も持てたし、最終回の劇中の「ケセラセラ」は視聴者が望んだとおりのタイミングに奏でられた。間違いなくこのドラマの雰囲気と完成度の一翼を担っていたと思う。

日曜の夜ぐらいは…

なによりしんどそうなドラマだと思ってたら終始平和なシナリオで通し、それでいて面白く仕上げてきたところが見事だった。毒親に宝くじ、悪意ある同僚にイケメンコンサルタントw あきらかに何か起きるやんと思っていた。おかげでその日の18時か20時に日本の古の戦争ドラマを観ている身としては22時から1時間でリセットしてもらえる貴重なドラマだった。

 

最後にズバッと言い切って終わったところも良かった。

「今、2023年にこの世界に生きてる人は、みんな傷だらけで戦ってる戦士みたいなものだと私は思う。全ての戦士達の心に休息を。せめて日曜日の夜ぐらいは」

「皆が一度深呼吸できますように。でないと戦えないよ。どうかよろしくお願いします。」

戦士代表岸田サチ