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仮面ライダー響鬼 その弐 奨める理

仮面ライダー響鬼に関しては当時興味が湧きすぎて娘とヒーローショーに行ったり、フィギュアを買ったり、関連書籍を読み漁ったりしていた。ここまで私が虜にされた根源は何か。それは間違いなくプロデューサー高寺成紀氏のこだわりだったんだと思う。途中降板により響鬼自体のイメージへの影響は少なからずあったと思われるが、良い作品を作るという信念が招いた結果だとすればむしろ手を抜いていなかったという証明でもある。もちろんすべてが完璧だとは思わない。ミュージカルテイスト過ぎる始まりなど好きな作品ゆえにここはこうして欲しかったという箇所も結構ある。それでも私の中でいまだに傑作と位置付けられている理由は、粗(アラ)を凌駕する精度があったからだと思う。

 

響鬼は仮面ライダーの中でも異色である。見た目や雰囲気もそうなのだが、そもそもが仮面ライダーではなかったという経緯がある。新生どころか仮面ライダーではないものを制作している途中で仮面ライダーへ戻すということになったのだ。そのことにより枠にとらわれない作品になった。何よりバッタ顔ではないので知らない人が見たら仮面ライダーだとは思わないだろう。和のテイストで武器が楽器、基本現役のライダー(鬼)は弟子を持ち次世代を育てながら戦う。担当地域が決まっているが、サポートメンバー(猛士)や他の鬼と協力しながら戦う場合もある。世を忍んで活動しているため拠点は和菓子屋の地下。もちろん関東以外で活躍している鬼もいて総本部は奈良にある。大まかな設定だけ挙げてみたら笑えてきた。仮面ライダーに限らず各特撮には話を面白くさせるための設定があると思うが、響鬼の設定は書き出したらまるでコントのようだ。しかしこれを現実世界に上手く調和させ人間模様を描いた子供番組の奇跡の傑作・・・となればよかったのだが子供ウケは良くなかったようだ。

 

私の感覚としては特撮もアニメも月9も時代劇もおなじドラマというカテゴリーだ。なんなら子供の頃特撮で育った世代が40代50代になってきたので、大人向けの特撮を作ったらどうだろうと思う。ドラマなんてフィクションなのに特撮技術をあえて使わない方がもったいない。仮面ライダーは子供向けという縛りによる弊害は仕方がないし、結果=売上を求められる。初代ガンダムがリアルタイムなときは視聴率が悪かったのと同じで、継続するか打ち切られるかは運の要素もある。響鬼は子供ウケは良くなかったかもしれないが決して難解な話でもなかった。でもおもちゃが売れなかった。そりゃあデザインが渋すぎる。音叉はプレゼントしにくい。仮面ライダーも商売と見てしまえばおもちゃの売上が悪いというのは致命的ともいえる。それでもあえてドラマとしてお奨めしたい作品なのである。ヒビキと明日夢の関係の描き方なんてある意味複雑怪奇だ。ある種二人の恋愛ドラマとしてみたら予想外の結末を楽しめる。

 

シナリオの面白さももちろんあるのだが単純にヒーローがかっこいいというのも特撮であることのメリットだ。特に響鬼の場合、斬鬼・轟鬼が出てきたとき久しぶりの特撮だったからか誰が誰だか分からなくなりそうだった。顔デザインは基本黒地にラインだけで構成されている。よく見ると目はない。体も基本一色で少なめの装飾が施されている。この統一感がたまらない。最近のライダーの最終フォームはインパクトと売上を得る代わりに何かをなくしている感が凄い。装甲響鬼でギリだ。

 

演者方も良かった。平成ライダーにはいつも特撮っぽくないベテラン俳優が1人配置される。響鬼では猛士の関東支部の事務局長を下條アトムが演じた。自然な安定感。響鬼のどこかまったりとした雰囲気は彼のせいではないかと思う。大げさな演技ではないため緊急事態の緊迫感も見事だった。ヒビキ・ザンキの年長者から若い明日夢までみんな個性的でいて演技が上手かったと思う。桐谷京介は電王で挽回するとしてゆるしてやってほしい。彼こそまさに鍛えられたのだと思う。

 

そして響鬼(ヒビキ)という名に恥じない秀逸な音楽。童子や姫が出てくるときのBGMなどはまさに子供番組的ではなくおどろおどろしい。後期オープニングも嫌いではないがやはり「輝」と「少年よ」と響鬼の相性はすばらしかった。これまた子供が絶対歌わないであろう布施明。今思えば東映はよく許可したなと思う。紅白で歌ったときは細川茂樹まで登場して面白かった。NHK太っ腹。その他にも細かいところではディスクアニマルというアイテム。アイデアの塊のようだった。CDのような円盤が動物の形態になり、諜報活動や時には戦闘などをサポートする。魔化魍のCGはまだまだ粗かったがディスクアニマルのとけこみは見事だった。機械的な鳴き声もかわいらしかった。

 

「仮面ライダー響鬼」むしろ普段特撮を見ない人やジャンルにこだわらない人に純粋に観てもらいたい。私を特撮の世界に引き戻したこの作品をダマされたと思って体験してもらいたい。もういちど見返してさらなる細かい魅力も随時アップしていきたい。