漫画全巻ドットコムで期間限定４０巻まで無料で読めたのでコツコツ読んでみた。紙のコミックスは実家にあるのだが、今は親の愚痴を掻い潜ってまで取りに行く気力がなかったので助かった。この４０周年に読み返したかったのだ。
全部の話を当然読んだことがあるので、先週のソルジャーの指名みたいなドキドキ感は一切なかった。それにしても２８６話。月曜日の朝の読む前。ニュースの検索をしてしまったのが悪かった。たまたま目についた急上昇ワードランキングの中に、あの超人の名前が。ネタバレ厳禁な時は真っ先にキン肉マンを読もうと心に誓った。フルメタルジャケッツってｗ。コンビ名ってマンガの設定では誰がつけてるのだろうか？タッグトーナメントはコンビ名も申告制？それにしてもどれもセンスが凄い。モースト・デンジャラスコンビが最も弱かったり、超人師弟コンビとか何のひねりもなかったり。２０００万パワーズは今なら年金問題のＰＲに使えそうだ。
話を戻してみる。やっぱり話も絵も今のキン肉マンに慣れていると読むのがしんどかった。それだけゆでたまごが進化していると改めて気づかされた。初期のキン肉マンは７０、８０年代にありがちな線が粗いイメージがある。すっきり読みやすくなるのはタッグトーナメントくらいからで、描き方も安定していない。キャラクターが最初から定まっているのも皆無で、復活後の完璧超人始祖編で新キャラが出そろっていることに驚いてしまった。何せ適当。行き当たりばったり。辻褄があわないことのオンパレード。よくこの漫画が続いたなと思わざるをえない。この欠点をもってしても今人気が復活してるキン肉マンの凄さ、底力とはなんなのだろうか。
最初はドジでダサいキン肉マンが、強くてカッコいいというギャップのせいかと思った。しかし一時期同時連載をしていた闘将!!拉麺男もまた面白かったのだが、ラーメンマンはキン肉マンのようにドジではない。一貫してお笑い要素はないのだがキン肉マン同様にハマっていた。そうなるとキン肉マンが面白い原因は主人公のおふざけ具合ではないということ。友情や正義を掲げる少年マンガは数あれど、ここまであからさまなマンガはキン肉マンが唯一無二だろう。大人になればどこか友情も正義も口にするのは恥ずかしいものになる。スマートにおしゃれにあからさまには表現しないことを美徳だと思い始める。それに対抗するかのようにキン肉マンは少年マンガであることの姿勢を変えない。常に友情と正義を叫び、逆転ファイトでそれを体現する。
ゆでたまごは少年の心をつかんだときの状態のキン肉マンを一貫してキープしている。初期のギャグ路線だった頃のキン肉マンはまだ「キン肉マン」ではなかった。残虐超人や悪魔超人と対峙させることによって炎を宿したキン肉スグルにたぶん手ごたえを感じたのであろう。先日のオールナイトニッポンだったか何かで、ジャンプ連載時の心境を語るゆでたまごのエピソードで驚いたことがあった。人気投票により連載漫画の格付けがされてしまう中で、他の連載作品が上位に来そうなときはそのクライマックスにキン肉マンのクライマックスを当てることがあったという。まさに凄い自信だ。今のキン肉マンなら他の人気作にも負けない自負があったということだ。その後人気があるうちにキン肉マンを終わらせたかったとも話していたが、王位争奪戦後半は人気のピークはあきらかに過ぎていた印象はあった。
でも少年時代に読んだキン肉マンと変わらないスグルを復活させることで、我らの心の炎も復活したのだと思う。前にも書いたがⅡ世のキン肉スグルでは過去の少年の心には響かなかったと思う。同じキン肉スグルがいるから僕らは戻って来れた。ダサくても意味不明でも脈絡がなくても我らキン肉マンが同じならそれでいい。嶋田先生のストーリーも中井先生のビジュアルも変わらない安定感。それがキン肉マンの底時だと思う。これはキン肉マンを思いついた運命と必然だと思う。リバイバルマンガのほとんどの絵が昔との違和感に泣いてしまうが、中井先生の力とキン肉マンのドラえもん並みの安定的なデザインのポテンシャルもあると思う。変わらないキン肉マン、それが強さの根底だ。
悪魔超人や完璧超人編に比べて長期だったのに、なんとなくインパクトに欠ける王位争奪編だが私的には最も好きなシリーズだ。参加人数が多いのでキャラによっては印象が薄くなってしまうのが要因ではないかと思うが、超人血盟軍や人気超人の復活戦などが盛り込まれ、そして絵がキレイで読みやすい。今はさらにアングルや構成がさらに読みやすくなっているが、復活したキン肉マンの今でも通じるクオリティーの基礎は王位争奪編で完成していると思う。３７巻読み切り集のウォーズマンなんて美しくて惚れる。
