新しい石川県立図書館がオープンしたらしい。らしいというからにはまだ行ってはいない。見た目のインパクトが凄いので蔵書数を調べてみた。旧石川県立図書館が約77万冊。今回完成した新館は収蔵能力は200万冊らしい。増やしていくには時間もコストも掛かると思うけれど、国会図書館や大学の図書館を除けば収蔵力なら全国トップ10付近になってくる。近くに住んでいる人は羨ましい。
何年か前にどうしても見たい古い雑誌があって、古本屋にもネットオークションにもなく諦めかけていたら滋賀県立図書館に保管されていることが分かり見に行ったことがある。もちろん地元の図書館にも最近特にお世話になっている。もっぱら気になった小説を借りているだけなのだが、あればすぐ手に取れて読めるところがいい。新作だと競争率が激しいけれど好きな作家の古い作品ならネットより早く待つストレスがない。
罪悪感はある。地域で1冊の本を回し読みされては出版社も作家も利益にはならない。ネットのコミックサイトのように広告料で少しでも還元出来る仕組みがあればいいと思うけれど公立の施設ではそれは難しいだろう。誰もが無料で情報や文化に触れられる場所は大切だ。昨今問題の教育格差を少しでもなくす昔からの担い手といえる場所。近くにないのでまだ行ったことはないけれど民営の図書館ってどうなんだろうか。
なんで行ってもない図書館の話題なのか。ここ10年くらいネットやスマホが発展していくにつれて本を読む量が激減していっていた。読む時間がないというよりも、本を読んでいた時間が別のことに置き換えられてしまった。わざわざ買ったり取り寄せたりしなくても目の前で新しいものが見られればそちらに飛びついてしまう。そして面白かったりする。紙で古いものを読む価値はないと考え始めていた。
それが具体的に解消されたわけではないけれど、最近小説や漫画を読む時間が増えつつある。外的要因としては時間に追われるタイプのスマホゲームをしなくなったことw 昔読んだ小説や漫画が面白かったことなど。1例的には「新信長の野望」なるスマホゲームを始めた流れで「花の慶次」を読み返している。それなりに最近の漫画も読んで面白かったものもあったけれど、久しぶりに読んだこの作品がビックリするぐらい良い。実家にあるのでスマホサイトで読んでいるが、まだ兼続も出てきていないし佐渡攻めもこれからなのに既に面白過ぎる。
知らない間に新作があったり原哲夫が描いていないものが出たりしている。同時進行で読んではいる。面白くないことはない。でも正直なところオリジナルにあるような緊張感が足りないし何よりキャラクターのデッサンが甘く感じる。新装版の表紙の慶次の違和感といえば共感者が多いと思う。北斗の拳やCYBERブルーで完成された画力で始まったこの作品は今見ても素晴らしい美術作品だと思う。そして何よりもその画力に負けない原作の面白さに尽きる。
高校生の時に原作の「一夢庵風流記」を読んだ。普通科だったので一応進学の勉強をしなくてはならなかったのだが勉強合宿には「鬼麿斬人剣」を持ち込んでいた。それまでほとんど漫画しか読まなかったのに私を小説の世界に引き込んだのは「隆慶一郎」である。まさかとんでもなく面白いと思っていた漫画を超えてくるくらいの話だとは想像が及んでいなかったので度肝を抜かれてしまった。
漫画と原作のストーリーが異なるところはいくつかある。大きなところでは漫画では琉球編が朝鮮編だったりする。でも一番もったいなく感じたのは原作の序盤にある金沢出奔後に立ち寄った敦賀での話である。漫画ではすっぽり抜けて捨丸と合流する。大谷吉継とその家臣との話。未読の人には是非読んでほしい話なので詳しくは書かないが、秀吉に対する慶次と吉継の捉え方の違いになるほどと思わされる。何事も一面だけでは判断してはいけないということの戒め的なエピソード。
花の慶次も一夢庵風流記も令和に読み返しても抜群に面白い。それが昔の未読の面白い作品を見逃しているのではないかという危機感を生んだ。ちょっといいわけになるけれど借りた中で面白かった作品は買ってストックしてたりする。将来の楽しみをストックしているのと、ある安心感が日々のやる気につながるのだ。図書館を活用して日々そのストックと安心感を積み重ねている。