Quinoss.com

物語の感想やニュースの意見等々を更新しています

浅田信一 / タイムマシンに乗って

京都アニメーションの事件や吉本興業のゴタゴタなど、本来このブログだったら真っ先に考えを述べたいことがたくさんあったのだけど、筆が進まない?文章を打つ気分になれなかった。私は物語と音楽とお笑いが大好きだ。ひいてはそれを作っている人、生み出している方々にはこの世のどんな製造業の人よりも感謝とリスペクトをしている。衣食住に係わる人や治安を守っている人々にも感謝はもちろんある。でも世の中の需要に左右されながら、ある意味ギャンブル的な職業を選び生きていて、他人に幸せを届けている彼らによって自分は形成されていると思っている。自分の人生で声をだして笑った何割が漫才だろう。涙した何割がアニメだろう。いくつの歌によって明日を生きようと思えただろう。

 

自分も生み出す側になることが夢だった。特に小学生の頃は絵が好きで褒められたり賞をもらったりすることもあった。でも大人になるまでそれを継続させるには才能と運と志が足りなかった。京アニで働いている人たちはそれを持っていた、持ち続けていた人たちの集まりだ。そんな人たちに対してこれ以上ない理不尽を与えたことは許されない。音楽や漫画など20~30年前に比べたら夢を叶えて満足いく生活が出来る人々の人数はあきらかに減ったと思う。YouTubeやSNSで個人が作品を発信できる時代。趣味感覚の人やクオリティの高い素人が蔓延り入り交じってその中で勝ち抜かなければならない。生活は大変なのにライバルは多いという今は、コツコツ努力する人にとっては受難の時代ではないだろうか。

 

幸せを供給してもらっていた人々のさらなる不幸に胸を痛め、何か声を出したいけれど変えられるはずもないと己の無力さに今は打ちひしがれるだけだった。このタイミングで浅田信一のニューアルバムが届いた。何故かこれまでSMILEや浅田信一の新譜は凹んでいるときによく手に届く。SMILEの最後のオリジナルアルバムは最初の仕事を辞めるときだったし、ソロになってからの最初のアルバムは祖父が亡くなったときによく聴いていた思い出がある。SMILE時代から自分の心の沈みの深度を浅くしてもらってきた。いつも手に入れたその日はアルバム2周分2時間のドライブに出る。仕事終わりに吉本興業社長の会見批判のニュース記事を少し読んでから車を走らせた。

 

映画の予告と同じでYouTubeの功罪というか、我慢できなかったので事前にトレーラームービーは見てしまっていた。感動が半減するのは目に見えているので見ないようにしたかったのだが、やっぱり欲求に負けてしまった。アルバムのトレーラーは正直やめてほしい。まっさらの状態で聴きたいのに見ないではいられない。とりあえずDreamsから聴いてみた。遥かな~で始まるサビは何度も聴いていた。そこまで抑揚もなくスムーズ。安定の1曲目だ。浅田信一が始まったといった感じ。2曲目も知ってる。タイムマシーンに乗って♪というサビがキャッチーな曲だ。前奏が始まる。あぁ名曲入りの予感。好きになる曲って前奏の入り方で分かりません?明日の行方もDead Manもラズベリーも他の名曲たちも、小説と同じで入りが好みなものは名曲入りする。

 

一抹の不安はあった。サビがキャッチー過ぎる。少し軽くないだろうか。そんな心配は一蹴された。繰り返し聴いた「タイムマシンに乗って」というフレーズの表情が一変した。あの日から僕だけがいくつか年を取り、君はまだあのときのままさ。泣ける。サビ前の歌詞だがここまでループするような同じメロディだ。それが4回続く。浅田信一の得意とする技法だがここまでサビの爆発力を上げられた曲はあっただろうか。フルサイズのタイムマシンに乗っては胸が熱くなった。トレーラーで聴かされたサビの印象がここまで良い方に変わるのは驚きだった。新しいアルバムを聴くときの弊害なのだが未知の曲を聴きたい欲求と、良い曲をループしたい欲求とがぶつかる。この日はループを我慢して全曲通しで2回聞いた。浅田信一には珍しくキャッチーな曲の比率が高い。しばらくは飽きないことを願う。

 

憂欝な気分が新たな名曲と歌詞によって少しづつはれてゆく。誰かの助けになるようなブログを書きたい。世の中に知られていない作品やクリエイターや芸人たちを紹介していきたい。明日の仕事も頑張ってみようと思う。タイムマシンに乗って生み出す側になりたかった自分を少し見てみようと思えた。

 

タイムマシンに乗って 君に会いに行くよ

過ぎ去りし時を超えて Yeah Yeah Yeah 

タイムマシンに乗って 君に会いに行くよ

いくつもの夜を越えて Yeah Yeah Yeah 

待ってておくれよ

  

浅田信一の曲で今のところ最も好きな「カゼノネ」が公式のディスコグラフィーから消えているのが気になる。単なる抜けならよいのだが・・・。

f:id:Quinoss:20190723213841p:image