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高瀬隼子 犬のかたちをしているもの 感想

今回の芥川賞候補作がまだ手に取れていないので、実質のデビュー作を図書館で借りて読んでみた。作品を読む前に彼女のことを調べてみたら高橋源一郎氏との対談とかが出てきて読んでしまった。人の感想を参考に読んでみることは多くあるが、審査員レベルの感想を先に読んでしまうとどうしても引っ張られてしまう気がするのであまりよろしくない。しかしまずおおむね同意だったのはタイトルの良さ。

 

森博嗣のことを書いたときにもふれたけれどタイトル大事。作品の内容を言い表している上手さよりも、何を意味しているのか興味を引かせるようなタイトルが好き。もちろん推理小説などはミスリードを誘う題名の可能性もあるだろう。作品との連動性は大切だが平凡で興味を誘わないタイトルだと物語に入りこむ加速力に影響する。犬のかたちをしているものとは何なのかどういう意味なのか気になった。

 

直近に読んだ作品とどうしても比較してしまうが非常に読みやすい。これまで何作か読んだことのある芥川賞作あるいは候補作は世界観や文章に入りこむのに時間が掛かるタイプが多かった。高瀬氏の作品がすべて同じかは分からないけれど情景描写や人間関係、言い回しなど読み返さなければならないようなところは一切なかった。それでいて心理描写の物足りなさも感じなかった。強いて言えば感情部分は書き過ぎなくらい。

 

これもやっぱり源一郎氏に引っ張られてしまうけれど描写の中心が「怒り」のためどうしてもその憤怒の説明が多くなってしまう。だだここで活かされてくるのが文章の読みやすさで、読み手が重い面倒くさい感覚にはならないですむ。その怒りに共感しながらも、読んでいる私自身の怒りには振り回されない。主人公とその怒りの根源たちの過程を冷静に読み進めていくことが出来る。主要キャラ3人ともに腹が立つけどw

 

内容には触れないが既読の方々はミナシロさんの生き方が常に正直なのか、常に嘘だったのかに分かれたと思う。この結末を予想して読めていた人はいただろうか。私は彼女じゃなければ主人公に「だまされているぞ」と言いたかったが、初対面からのキャラの振り切り具合から正直者だと決めつけていた。本当のところはそのキャラを演じていたのか貫いたのかは分からない。