Quinoss.com

物語の感想やニュースの意見等々を更新しています

年森瑛 N/A 感想

何か時代が正義の名のもとにだんだんと窮屈になってきている感覚がある。その代表的なものがSDGs。政治レベルではなく個人レベルで認知・浸透させたことは画期的で賞賛に値すると思う。1地域や1国がやっているよりも大きなうねりとなって効果は出やすいはず。しかしレジ袋のようにCO₂削減への効果が薄いにもかかわらず、みんなでやってる感・何かをやってる感だけで罪悪感を薄めているだけの施策もある。SDGsをお手軽に企業イメージに利用しているきらいもある。効果と目標を具体的にしなければ逆効果を生み出す可能性がある。

 

LGBTの問題についても社会認知は確実に上がったと思う。少なくともマスメディア上でゲイを嘲笑することはなくなった。世界的にも同性婚の議論は活発だし、特に若い世代の感覚は既に我々昭和生まれ世代とは違ってきている。それでもどれだけ認知が浸透しても少数派が生きづらさを解消するのは難しい。たとえば左利きというだけでも不便な世の中である。さらにはLGBTの中でもそっとしておいてほしい人や現状維持を望む人もいるだろう。勝手な想像による押し付けはしてはならない。

 

そんな中で先日直木賞芥川賞の候補作の発表があった。いつも逃さずチェックしていたわけではないが、今年は芥川賞候補がすべて女性というニュースで目についた。2005年の文藝賞で若干15才の三並夏作「平成マシンガンズ」を読んだが短いながらも熱量が凄かった印象が残っている。既に内容は覚えていないが若い女性の文学作品の鋭さを見せつかられた為、どこかで純文学は女性、ミステリーは男性作品を読むことが多くなってしまった。今回の4人の候補作の中の紹介で年森瑛『N/A』についての感想で多様性への違和感を表現とあり興味が湧いた。

 

ネタバレはしたくないのであらすじには触れないが、そういうことってあるだろうなという内容だった。SNSの中に無意識に出来上がっている別の世界。LGBTにしてもSDGsにしても無自覚の正義の押し付けに気を付けなければならない。多様性の中の少数派も狭い世界の中では多数派になり得る。多様性とはLGBT以外の人間も含まれるということ。少数派を尊重する世の中はやさしいけれど、LでもGでもBでもTでもそれ以外でもない人間もLGBTと一緒に生きていけることが本当の意味での多様性だと思う。

 

うみちゃん含め他の同級生たちのキャラ設定が良かった。みんなチャラいようで気遣いが凄い。楽しいことや夢中になることで視野が狭くなって他人を傷つけていることに気づかない。でも指摘されたりして理解した後のやさしさが染みる。多様性批判的な作品というよりも多様性の本質を知れる作品ではないだろうか。