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冬ドラマ 2020 感想 テセウスの船 絶対零度~未然犯罪潜入捜査~

2020年の最初のクールのドラマが一通り最終回を迎えた。個人的には非常に満足度が高かったという印象。医療モノと無差別殺人を取り扱う話が多く重めのストーリーばかりだったが、感動と同時に考えさせられるシナリオに唸らされた。もちろんすべてのドラマを観ることは出来ないし途中で脱落したものもあった。でも最後まで観た作品はどれも納得の最終回だった。アイスクリームのコーンの先が空っぽのような作品も結構あるが、今回感想を記す2作は特に最後まで詰まった渾身の出来だったと思う。

 

SNS等で他人の感想を毎度読んでしまうけれど、個人的にどんなに素晴らしかったと思った作品でも観る人や視点で全く違う。完全に否定はしないけれど今回のテセウスにシナリオが失敗とか面白くなかったと、わざわざ全部観た上で詳細を語る人は絶対楽しんでいるだろう。普通に観ている人以上に。こんなに事件が起きているのに素性の分からない主人公がなんで村に溶け込んでいるのか、怪しまれずにスルーされているのか、そこをツッコまずして動機が弱いとか設定が甘いとか。気楽に観ている視聴者よりもシナリオライターは考えている。全部を語れば無粋でしらける場合もある。そういう意味でのバランスも絶妙だったと思ったのだけど。以下2作品の感想です。

 

「テセウスの船」

それほど期待していなかったのだが開始前のPR番組を蕎麦屋の開店時間前の予想外の待ち時間にたまたま見てしまい、竹内涼真と鈴木亮平の暑めのアピールに負けてしまった。宣伝効果ってあるのね。中身の細かいところはあえて書かないけれどタイトルを最後に綺麗に回収したのは良かった。よくあるタイムスリップものには矛盾や違和感を感じながらもそこは置いといて楽しむことが必要になる。過去と現在を行き来することで歴史が変わる設定か、タイムパラドックス(矛盾)回避のためにパラレルワールドとするのか。ドラゴンボールのトランクスは後者。過去に行っても歴史は変わらない。理想の未来も別にあってほしいという自己満足。テセウスの場合は前者。現在に戻ると歴史が変わっている。

 

過去の世界で真犯人に刺されて亡くなってしまった主人公田村心。そのことによって無差別殺人犯を父に持つ田村心の人生はなくなり、幸せな家庭で育った佐野心の人生に置き換わった。でもそれは辛い人生を歩みながらも予期せぬタイムスリップを利用して田村心が必死に過去を変えたおかげ。それを知っているのは父佐野文吾のみ。ハッピーエンドで良かったという感想がほとんどだけど私はこの結末がとても残酷に感じた。命どころか短期間村にいた歴史だけを残してすべてのことがなかったことになった1人の青年の人生と引き換えに、助かった命や得られたたくさんの幸せな人生。父が知っているということが唯一の救いか。このやるせなさは「絶対零度AFTER STORY」の結末にも感じてしまった。

 

「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」

ミハン編第二弾。主人公を変えるという危険を冒してまで作り上げた絶対零度も前2シーズンで作った絶対零度ブランド価値を落とさずに同じく2シーズンをやり切ったと思う。ストーリーだけでなくアクションも素晴らしかった。テセウスと同じく序盤から関わっていた意外な人物が最後の犯人であり、気づける伏線もしっかりあった。全く分からなかったけどw テセウスとは異なるのは各話完結のミステリーがつながっていく形であるところ。それも各話面白かったし、ラスボスに近づくために必要なシナリオとなっていてこちらも見事だったと思う。

 

そしておまけのAFTER STORY。監察医朝顔のようにダイジェスト版で多少の強引さはあったもののこちらは満足度は高かった。ミハンの法制化の矛盾点。本来の犯罪の罪を軽くしてしまうこと。それによって被害者の更なる被害の危険性があること。なるほどなぁとは思ったけれど自分はその前にあったミハンの冤罪率5%の方が恐ろしかった。ミハンによって検挙された犯罪の95%の被害者が助かったとしても、5%の罪のない人間が犯罪者にされる。現実の裁判でもそれはいえるがミハンシステムの方が悪意が入り込みやすい気はする。どちらにしてもテセウスと同じで1人や少数の犠牲の上に成り立つ大勢の幸せは数で比較して良いことなのか。

 

2つの傑作ドラマが問題定義したこと。偶然だけどこじつけではなく今のコロナウイルスとだぶる。何かを優先すれば何かが被害を受ける。感染拡大を抑えることを最優先にすれば経済が落ち込む。オリンピックの開催はいつ?これまでの選手たちの努力は?人類の大きな難題に我々は答えを出さなくてはならない。ドラマの感想になぞれば少数でも理不尽な被害をなくしたい。大勢の我慢で少しでも最悪をまぬがれる人が減ることを願う。