和牛とぺこぱの順番が逆だった場合、最終結果が変わってたかもなと思った。
少しでも公平にするために今年も順序を決めず1組終わるごとに抽選する方式がとられた。これだと各組がいつ来るか分からないため、あらかじめ決められた順番の場合よりも後半の精神的な優位性は少し減らせるだろうと思う。ただ古今東西賞レースの順序が後半の方が有利であることは変わらない。審査するものは前半にインパクトのあったことを評価しても、後半にインパクトのある組が来た場合に相対評価として前半のインパクトは薄れがちになる。それがたとえ前半の方が良かったとしても後半組にそれを上回る評価をしてしまいがちだ。そういう意味ではトーナメント方式こそ相応しいといえるが試合数が格段に多くなり大会全体の中だるみの危険性が出る。自分的には3組ごとの勝ち上がり方式が最も良いのではないかと思う。ファイナルに勝ち上がるには対戦相手の運に左右されるが、勝者は最後の1組だけだと思えばファーストラウンドが好カードになっても実質の決勝が先にあっただけと納得できる。
とはいっても時の運は排除出来ない。そして常連組がいつもあと一歩のところを、初出場組が1年目で奪取するのも実力のうちだと思う。常に99点の猛者でもその年の他の組に100点を出されれば敗者である。だから私もその場では言い過ぎだと感じた上沼恵美子の和牛批判は的を得ていたと言わざるを得ない。常におごらず100点を目指していなければ何で足をすくわれるかは分からない。個人的にはファーストラウンドの和牛とぺこぱは和牛の方が面白かったと思う。でもぺこぱの点数が上回ったことにも異論はない。あの肯定するツッコミは素晴らしい発明だ。偶然にも2組に共通して好きだった部分は空間の使い方だった。和牛の部屋を出てステージ奥へはける見せ方や、ぺこぱの審査員側へ向けて漫才をするところなど丁寧さや斬新さだけではないお笑いのアイデアに感服した。急にステージの正面は変わらないだろw でもやっぱり和牛の2本目は見たかった。
そしてファーストラウンドを過去最高得点で勝ち上がり、ファイナルはあと1人で満票になるくらい圧倒して優勝したミルクボーイ。コーンフレークと最中の特徴を言っているだけの漫才なのだがそのワードと選択の巧みさに笑わずにはいられなかった。本来生産者の顔や成分グラフの疑念なんて考えないし、二個目の最中も全然いけるのに妙に共感してしまう。昨年の霜降り明星と異なるのは、ボケの数は少なくなる代わりに1本目はコーンフレーク、二本目は最中に関したことであること。霜降り明星の漫才の場合は極端に言えばどんなボケでもよい。縛りがない分自由度が高い。でもどちらかというと個人的には設定した縛りの中でどれだけ飛躍させ、でも共感させるかに挑戦しているミルクボーイスタイルの方が好きだ。見た目も相まって古臭いように感じるかもしれないが面白くてナンボ。松本が言ってた「行ったり来たり漫才」の発想だけに頼らない1ボケ1ボケへの丁寧さが良かった。やってる本人が面白いと思ってるか?と思うようなボケを混ぜた漫才が最も嫌いなのだが、ミルクボーイの漫才には隅々まで考えたであろう努力がにじみ出ていた。ただ手数が多いだけの漫才とは一線を画す手抜き感を微塵も思わせない漫才に没頭出来て幸せだった。
今年は1組目ニューヨークの不発具合と上沼恵美子の若干の暴走に不穏な空気があったが最終的にはハイレベルで満足いく大会だった。敗者復活戦から見ていて初見ではプロみたいなアマチュアのラランドやクラゲ、錦鯉などが良かった。決勝ではオズワルドが新しい感じで未来の売れっ子関東芸人感があった。ツッコミの伊藤が以前ブログで書いた伊藤沙莉のお兄ちゃんというのが驚きだが確かによく見ると凄く似ている。それから今回は前回と打って変わり立川志らくの評価が総じて的確だった。というか悪く言えば視聴者に媚びたようなますます去年は何だったのかという印象だった。それでもわけが分からないことを言われるよりはずっと良かった。客観的ではなく主観的な「面白い」「面白くない」で評価されていたように感じた。M-1なので「漫才」であり「コント」ではなかったり、制限時間のことだったり守るべきこともあるけれど基本的には面白いか面白くないかだけで白黒決めてほしい。