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「人生再設計第一世代」なんて呼び名は定着させるな

就職氷河期世代が「人生再設計第一世代」に名称変更、SNSでは「言葉遊びか!?」の声も

冗談だろうと思った。就職氷河期世代だとかゆとり世代だとかマイナスイメージの名称でひとくくりにする悪しき文化が日本には根付いているが、政府側からの提案でましてや負け犬世代さながらのこんな恥ずかしい総称を付けられては、該当世代のかろうじて残っている生きるためのモチベーションを根こそぎ奪い、まさにロスジェネにするつもりなのかと感じてしまった。

 

「人生再設計第一世代」なんて悲しい名称なんだ。これまでの人生は失敗でしたと、リスタートしなさいと言われているようだ。まだ就職氷河期世代とかロストジェネレーションとか言われているほうがカッコいいし反骨精神が湧いてくる。詳しい記事を見つけられずアメーバニュースのコピペ記事がほとんどで理解しきれてないのだが、第一世代ってどういう意味なんだ。第二・第三世代もあるのか?

 

まだ提言段階の決まりたての案みたいで内容は本当に大まかな事しか分からないが、一言でいえば「遅い」だろう。該当世代の中心が40才代になってしまっているので、本来ならこれまでの経験を活かした活躍が期待される世代だ。しかしその経験を得られないまま年齢だけを重ねてしまった世代に、雇う側はどのようなメリットを感じるだろうか。40代を雇ったら補助金が出るとか減税されるとか物理的なハンデをもらえるのだろうか。施策が遅かったとしても救われる人間がいるのなら何も悪いことではないのだが、たぶん救ってもらえる対象は現在無職やひきこもりの人のみだろう。当時不本意な就職をして耐えてきた人間や転職を繰り返してしのいだ者は対象にならない。ましてや行き詰ってフェードアウトや過労死した人たちには手遅れだ。就職率の低下や将来の人口予測を考え、分かりやすくもっと早くに国民に危機感を持たせる仕事を避けてきた国会議員。保身のためにマイナスなことを発信せず後回しにしたつけは取り返しがつかない。

 

私も就職氷河期世代だが、新卒のときは正直辛さは無かった。ハードルが低かったと言えばそれまでだが内定をもらうのには苦労はしなかった。その先に転職人生が待っていたのだけれど。8050問題など高齢の引きこもりのニュースを多く見るようになった。周りで話題になるとほとんどの人間が自己責任という言葉で片付け、瞬発的にその引きこもりへの怒りを発してしばらくしたら忘れている。仕事を選んでいるからそういうことになる。プライドを捨てろ。親に申し訳ないと思わないのか。身内にでも該当者がいない限りは他人事の人ばかりだ。無関心のつけはすぐそこまで迫っているのに。

 

こういった人々が勘違いしているのは努力をすれば全員が就職できたと思っていること。今では売り手市場と言われ求人倍率は高いかもしれない。しかし20年前は絶対的な求人数が少なかった。仕事を選ばなければ就職は出来たと思われているが、選ばずに就職した者がいたら別の人間があぶれるだけ。上を見ても下を見ても切りがないと言われるが、ほとんどの人が親のお金で大学に行っている以上就きたい仕事や給料の最低ラインはあっただろう。自分のまわりでも非効率な安い賃金の会社員を辞めて長距離トラックの運転手になった者もいる。そこでもともとトラック運転手を志していた人間の働き口は1個減っているということ。本来新卒だと同じような就職口を希望している者は同じような学生生活を送ってきた人間との戦いになるが、異種格闘技戦で異なる経歴を持つ者との戦いに敗れていった者も多かっただろう。椅子取りゲームの椅子がそもそも足りてなかったのに自己責任で片付けるのは浅はかだろう。

 

その時代その世代にそれぞれ特有のハンデはあると思う。それを運だと片付けるのは簡単だ。遅いけれども就職氷河期世代のハンデが格段に大きかったことがようやく認知され始めた。女性の場合は子供が産めるタイミングを逃してしまっているという物理的な取り返しのつかない遅さではあるけれど、せめて残りの人生の負担を少しでも軽くしてくれる施策を期待する。そのためには世間のこの世代に対する「自己責任」という感情を「救わねば」という気持ちに変えてほしい。人生再設計第一世代なんて政府任せになりそうな名称ではなく、全世代で就職氷河期世代を助ける行動が出来るような働きかけを行ってほしい。