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NGT48事件の問題

今回のNGT48の暴行問題。運営への批判で世間は団結しているが、事が起きて誰かが傷つかないと気付けないシステムだっただろうか。ましてや間近で見てきているファンたちこそ、このアイドルグループの危うさを分かっていなかったのだろうか。気付いてなかったとしたらおかしいし、気付いていて指摘していなかったらいじめを見て見ぬふりする傍観者の立ち位置と同じではないだろうか。もちろん私も含めて。

 

先日「下町ロケット」の新春特別編放送後に目にした記事があった。面白さを肯定しながらも佃製作所はブラック企業であるという指摘。夢で煽り従業員のサービス残業を当たり前にさせている部分。フィクションだからといってもなかなか世間も許さなくなった時代だが、なんでもかんでもいけないと枠を狭めていけば必要な描写も撮れなくなってしまう。阿部寛がタバコではなく大福を食べ続けるのも時代の流れだろうか。フィクションのなかでの過剰な制限はむしろ表現の妥協につながる場合があると思う。残業なしのホワイト企業が定時で帰って競合他社をバッタバッタと倒していったらコメディになってしまうだろう。寝る間を惜しんで努力してギリギリ勝って感動するのが物語だろう。はじめの一歩の鴨川会長の言葉を借りれば、「努力しても成功するとは限らないが、成功者はすべからく努力している」ということ。

 

今回の事件はフィクションではない。そして犯人が誰であるか、どういう経緯で起きたのかが問題ではない。起こるべくして起きたのである。

 

表向きや自分の保身のために世間はブラック企業体質を糾弾してきた。しかし自分と無関係だったり客の立場である場合は意外と冷たい。お店の従業員も警察官も芸能人も同じ人間である。自分は日祝盆正月は休みで日中勤務の仕事で働いている。今年の10連休は正直楽しみである。でも休めない業種の人にも同じ権利を与えてほしい。お店は儲かるから、芸能人は仕事が増えるから、警察官は働いて当たり前だからと同じ権利を与えないのはおかしい。

 

AKBグループは今までのアイドルにない競争型のシステムで成り立っている。お笑い芸人なら賞レースがあるし、俳優ならオーディションがある。歌手なら売上が公表されるし、漫画やドラマや映画も同じである。ただしAKBのシステムは同じグループ内での競争である。これまでのアイドルグループはグループ内での人気の格差はあっても表向きは一緒に頑張る仲間である。AKBグループの場合は表向きにも仲間同士の戦いを見せなければならない。もちろん選ばれし選抜組は他のアイドルグループとの本来の戦いもしなければならない。今では公式に設定されたライバルグループに押され気味であるが。

 

このシステムを楽しみ謳歌していたのは他ならぬ世間である。ブラック企業反対と掲げながら、未成年を含むアイドルグループの競争を持ち上げ加担してきた。いくらテレビの生放送でホワイト企業のごとく未成年の放送時間に制限を持たせても、彼女たちにのしかかっている拘束時間、ハードな練習、競争による精神的負担はブラック企業も真っ青なことくらい世間の大半が分かっていることだろう。未成熟な精神の彼女たちを競争で煽り、追い込んだら何が起こるか。起こってしまったら運営の責任にして、いかにも被害者の味方であるかのように糾弾する。直接触れ合うような握手会参加者、投票権という名のCDの購入者、総選挙の視聴者すべて運営と同罪である。自分たちで追い込み追いつめて起きた出来事の首謀者を、断罪している自分たちが本当の首謀者である。

 

夢を煽って、フィクションではない彼女たちの努力をお金に変えて儲ける。ここまでは仕方ないとしてもリスクヘッジが適当だったのが残念。地方になれば彼女たちと外部の人間との距離は近づきやすい。本体のAKB以上に注意が必要だったはず。手広く広げるだけ広げた秋元康の他人事のような発言も気になったけれど。これは記事の見出しを見ただけなので本当の彼の関わり方はよく分からない。せめて彼女たちのリスクを真剣に取り除く努力だけはしてほしい。未成熟な彼女たちが健全に安全に夢に努力出来るように。大勢の見知らぬ人間と握手させるような精神的負担はやめてあげてほしい。それに長けた須田亜香里などには可哀そうだが、例えばジャニーズが同じことを行えば売上は上がるが、あえてそれを回避していることは明白である。売上よりも優先しなくてはいけない部分はある。タレントも人間として大切にしていただきたい。

 

とはいっても大手がやらなきゃウチがやるといった中小事務所が出てきてしまうだろう。下町ロケットではないが他社が出来ないことをいかにやるかにしても、法の抜け穴を突くようなイタチごっこをやられても意味がない。世間が監視しブレーキをかけなければならない。本当は2014年の握手会の事件で気付かなければいけなかったのだ。未成年たちを大人の食い物にしてはいけない。彼女たちの努力を使い捨ての金儲け人形にしては絶対いけない。努力する人間を守れない日本はいずれ滅びてしまうだろう。